蒸気機関車が動く仕組みをCGの図などによってその構造などを交えて整理しています。ここは、その4「合併テコ」です。
蒸気機関車の仕組み(構造) – 8 – 蒸気室とシリンダ
蒸気機関車のシリンダへの蒸気の給排気を制御するピストン弁は蒸気室の中にあります。
この蒸気室はシリンダと一体の鋳物で「シリンダ体」として作られています。
ワルシャート式弁装置を持つ機関車は左右1対のシリンダ体を持っています。
3気筒機関車のC53形機関車ではこの中間にもう一つのシリンダ体があります。
シリンダ体の上部には脇路体(バイパス弁)を取り付ける座があります。
シリンダの下部にはシリンダ排水弁(ドレン弁)がつきます。
冷えたシリンダに蒸気を送り込むと蒸気も冷えて水に戻ります。
この水を排水しない状態でピストンを動かしていくとウォーターハンマー現象となってシリンダを破壊します。
そのためにシリンダ内の水を排水するための弁・シリンダ排水弁(ドレン弁)がついています。
蒸気機関車が勢いよくシリンダの下部から白い蒸気を出しているのはこのシリンダ排水弁から排出される水と蒸気です。
3つあるシリンダ排水弁のうち、真ん中のものは蒸気室の排水弁です。
運転席の加減弁で流量を調整された蒸気は蒸気管を通って蒸気室に送り込まれます。
この蒸気管は蒸気室の後ろ側中央にあるフランジに接続されます。
一方、シリンダでピストンを動かした蒸気は同じく蒸気室を通って吐出口に導かれます。
蒸気室の前側には空気弁の座とのぞき窓があります。
のぞき窓は蒸気室ブッシュの穴をピストン弁がふさぐタイミングを確認するために使用されます。
空気弁とのぞき窓の蓋は外板の上にでていますので、おなじみの物だと思います。
脇路体(バイパス弁)、空気弁についてはまた改めて。
シリンダ体をフレーム側からみると左図のようになっています。
吐出口や蒸気管のフランジなども一体で鋳込まれていますが、吐出口を取ってみると蒸気室を抱き込むように蒸気管のフランジが回りこんでいます。
蒸気室、シリンダをカットしてみると左図のようになっています。
蒸気室は5つの部屋に区切られています。
左から、
- 吐き出し口につながる部屋(この図ではわかりにくいのですが、後方の吐出口につながっています。)
- 蒸気室とシリンダをつなぐ部屋
- 蒸気管からの蒸気が入る部屋(中央の楕円形に見える口が蒸気管のフランジからの入り口です。)
- 蒸気室とシリンダをつなぐ部屋
- 吐き出し口につながる部屋
です。
蒸気室とシリンダをつなぐ支柱の中が蒸気の通路となっています。
蒸気室ブッシュの中をピストン弁が往復し、ひし形の穴から蒸気の出し入れを制御します。
蒸気室ブッシュは一つのシリンダ体に2つセットされます。
この状態のとき、蒸気管から蒸気室中央の部屋に送り込まれた蒸気は前方の蒸気室ブッシュの穴をとおり、シリンダに流れ込みピストンを後方に押します。
ピストン後方にあった蒸気は、後方の蒸気室ブッシュの穴から吐出口へと流れ出ます。
この状態のとき、蒸気管から蒸気室中央の部屋に送り込まれた蒸気は後方の蒸気室ブッシュの穴をとおり、シリンダに流れ込みピストンを前方に押します。
ピストン前方にあった蒸気は、前方の蒸気室ブッシュの穴から吐出口へと流れ出ます。
蒸気を2つのピストン弁の間からシリンダに給気するため内側給気と呼ばれています。
逆に、ピストン弁の外側にシリンダへ給気する蒸気があれば外側給気となります。
外側給気の場合、蒸気室と蒸気室の蓋の気密について内側給気以上に気を使う必要があります。
蒸気室の前後には図のような蓋がつきます。
この図はC59型機関車のイメージです。
車両によって形態は違いますが、基本的な構造は同じです。
シリンダ体をいろいろな角度からみた図は「こちら」にあります。
蒸気室の蓋をいろいろな角度からみた図は「こちら」にあります。
記事の続きは
・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 9 車輪とレール」
この前の記事は
・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 7 動輪の位相」