蒸気機関車が動く仕組みをCGの図などによってその構造などを交えて整理しています。ここは、その2「逆転機構」です。
蒸気機関車の仕組み(構造) – 6 – 返りクランク

機関車の前進、後進を切り替えるには、シリンダ内のピストンの前方、後方どちらに蒸気を給気するか決める必要があります。
(写真上)
動輪のクランクピンが、動輪中心より下側にあるとき(図の上)は、ピストンの前方に蒸気を給気するとピストンが後方に押され、動輪は前進方向に回転します。
逆に、動輪のクランクピンが、動輪中心より上側にあるとき(図の下)は、ピストンの後方に蒸気を給気するとピストンが前方に押され、動輪は前進方向に回転します。
このため、クランクピンの位置がどこにあるのかを検知してシリンダへの給気を制御するピストン弁を動かす必要があります。
(写真上) クランクピンの位置を検知して加減リンクの傾き加減を操作してピストン弁の移動方向を決めるのが返りクランク(リターンクランク)と偏心棒です。
(写真上) 返りクランクはクランクピンに取り付けられています。
これ自身はクランクピンを中心にして回転するといったことはなく、ある角度をもってクランクピンに固定されており、クランクピンと一緒に動きます。
(写真上)
図の上ようにクランクピンが真下にある状態のとき、返りクランクは偏心棒を押し、加減リンクは後ろに傾いた状態となっています。
その結果、心向き棒は前方に押され、ピストン弁も前方に移動します。
図の下のようにクランクピンが真上にある状態のとき、返りクランクは偏心棒を引っ張り、加減リンクは前に傾いた状態になっています。
その結果、心向き棒は後方に引かれ、ピストン弁も後方に移動します。
この動きによって、前後どちら側の給気ポートを開くかが変わってきます。
(写真上) 蒸気機関車の図面(設計図)には、弁線図というものがあります。
これは、加減リンク、心向き棒、合併テコ、返りクランクが締め切り率を変えていったときどのような範囲で動くかといったものが書かれたものです。
ちなみに、C59形機関車の場合、弁の最大行程は148mmとなっています。
つまり、前進か後進のフルギヤにしたときのピストン弁は148mm動くということです。
また、動輪の中心からクランクピンの中心までの距離は330mmですので、ピストンはその倍の660mmのストロークを持っているということになります。
記事の続きは
・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 7 動輪の位相」
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・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 5 クロスヘッド、連結棒と動輪」