蒸気機関車が動く仕組みをCGの図などによってその構造などを交えて整理しています。ここは、その2「逆転機構」です。
蒸気機関車の仕組み(構造) – 3 – 加減リンク
2 逆転機構で述べた逆転軸腕につながってくるのが加減リンクです。
(図では加減リンクの動きに同調して移動する心向き棒も青くなっています)
加減リンクは、加減リンク体を2つの加減リンク側がはさむ構造となっており、弧を描いた形状となっています。
加減リンク体の中央の溝は研磨され、円弧状の溝にそって滑り子が移動できるようになっています。
滑り子には心向キ棒がとりつけられます。
心向き棒の後端にはツリリンクがつき、2 逆転機構で述べた逆転軸腕によって前進時は押し下げられ、後進時は引き上げられます。
ツリリンクによって押し下げられたり、引き上げられたりした心向き棒は、加減リンク体の弧にそって移動するため、前進や後進のときは中立のときに比べてその先端が前方に移動することになります。
加減リンク体の下部は動輪の返りクランクと連結されており、動輪のクランクピンの位置によって前傾や後傾するように動きます。
上の図は加減リンク体が後ろに傾いた状態です。
前進のときの心向き棒の前端は中立のときより前方に移動します。
逆に、後進のときの心向き棒の前端は中立のときより後方に移動します。
上の図は加減リンク体が前に傾いた状態です。
前進のときの心向き棒の前端は中立のときより後方に移動します。
逆に、後進のときの心向き棒の前端は中立のときより前方に移動します。
心向キ棒の前端の移動量は、滑り子の位置がリンク体の中央から遠いほど大きくなります。
逆転ネジを回しきって、前進フルギヤ、後進フルギヤとしたときは滑り子の位置がリンク体の中央から一番はなれた状態で、心向キ棒の前端の移動量が最大となります。
この位置から逆転ネジを徐々に戻していくと滑り子は徐々にリンク体中央に近づいていき、心向キ棒の前端の移動量が小さくなっていきます。
この心向キ棒の先端には合併テコがつき、シリンダへの給排気を制御するピストン弁を動かします。
心向キ棒の移動量が大きくなるとピストン弁の移動も大きくなり、シリンダへの給気口が長く開いていることになります。
逆に、給気口を閉じて蒸気の膨張を利用してピストンを押す時間は短くなります。
心向キ棒の移動量が小さくなるにつれ、シリンダへの給気口が開いている時間は短くなり、締め切ったシリンダ内で蒸気を膨張させる時間が長くなります。
発車時や上り勾配で力強くピストンを押したいときには、心向キ棒の移動量が大きくなるようにしておいて加減弁を開いて蒸気をどんどん送り込んでいけばよいことになります。
機関車に速度がついてきて、さらに平坦な路線でさほど力が必要でなくなれば、心向キ棒の移動量を小さくして蒸気の膨張する力を有効に利用すればよいことになります。
(さらに惰性で十分なときは蒸気も供給せず、絶気運転となります。)
機関車が停止している状態から前進または後進するためにシリンダに給気するとき、ピストンの前側から給気するか、後側から給気するのか決める必要があります。
これは、加減リンク体が前傾しているか後傾しているかによっても変わりますが、別項で改めて。
加減リンクをいろいろな角度から見た図は「こちら」にあります。
記事の続きは
・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 4 合併テコ」
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・・「蒸気機関車の仕組み(構造) – 2 – 逆転機構」