蒸気機関車が動く仕組みをCGの図などによってその構造などを交えて整理しています。ここは、その8「蒸気室とシリンダ」です。蒸気機関車のシリンダへの蒸気の給排気を制御するピストン弁は蒸気室の中にあります。この蒸気室はシリンダと一体の鋳物で「シリンダ体」として作られています。ワルシャート式弁装置を持つ機関車は左右1対のシリンダ体を持っています。
蒸気機関車の仕組み(構造) – 7 – 動輪の位相
蒸気機関車はシリンダ内で往復運動するピストンの力を動輪の回転運動に変えて動きます。
ピストンがシリンダの端まで移動すると、そこで折り返して逆方向に移動します。その折り返し点が死点です。
ピストンが死点にあるときにはピストン棒、主連棒(クランクピン)、車軸の中心が一直線上に並んだ状態です。
この状態で停止していると主連棒を押しても引いても車輪は回転させることができません。
自動車などのエンジンではセルモーターでクランク軸を回転させることでピストンは死点を通り越すことができますが、蒸気機関車では外部に動力がないので車輪を回すことはできません。
その死点を通り越すための工夫が動輪に位相を持たせることです。
一般に蒸気機関車は左右に2つのシリンダを持っています。
そこで、車輪のクランクピンの位置(角度)が左右でずれるように動輪が組み立てられています。
これが動輪の位相です。
片側のクランクピンが水平の位置にあるときは、そのピストンは死点にあり、そのピストンでは車輪を回転させることができませんが、もう片方のクランクピンは90゜ずれた位置、つまり真上にあります。
このときのピストンの位置は前後の死点の中間ですから十分力を発揮できます。
通常、右側の車輪のクランクピンが水平のとき、左側のクランクピンは真上になっています。
ただ、大正時代の名機9600形蒸気機関車は左側のクランクピンが水平のとき、右側のクランクピンが真上にくる左先行となっている話は左足から歩みを進める武士道機関車として有名です。
もっとも、これも意図的に設計したのではなく、図面の見間違えが発端のようで十数両製造した段階で誤りに気が付いていたようです。ただ、その後もずっとそのまま製造されつづけ770両の大所帯となっています。
C53形機関車は左右のシリンダの他に、台枠の間にももう1つシリンダがある3シリンダー機関車です。
この場合、それぞれのクランクピン、クランク軸の角度は120゜ずれています。
(厳密には120゜からちょっとずれています。)
この機関車、極まれでしょうが不動となることがあったようです。
返りクランクの角度を反対側にずらすと・・・ムムムッ。
余談ですが、せっかく、動輪の図をカットしたので・・
箱型輪心は内部が中空になっています。
(実物の肉厚は、この図よりさらに薄いです。)
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